HISTORY「彩木が歩んだ進化の軌跡」
朽ちない天然木として
住宅業界で評価を得ている
人工建材「彩木」。
その開発の歴史は2005年の
あるベンチャー企業の誕生から
スタートします。
彩木の元となる技術の誕生
長野県が工業試験場の跡地を利用して開設した、ベンチャー企業の創業を支援するセンターに、第一号で認定を受けて入居したのは、2005年に2人の技術者が設立した「ブレインチャイルド」という企業でした。木や石をはじめとする自然物のテクスチャーを、ウレタン樹脂などの工業素材を用いて再現・製作するのが主な事業です。「例えば、石は重いし加工もしにくい。もし、石を樹脂で再現できれば、良い建材が量産できるのではないか」と、2人は考えていたといいます。
MINOとの共同プロジェクト
各種技術の試作に手応えを得たブレインチャイルドは、アイデアを一緒に商品化するパートナー企業を探す活動を開始します。2人が起業前から付き合いのあった美濃工業株式会社を訪れます。ダイカストの製作を主な事業としていた美濃工業は建材部門も有しており、2人はそこに話を持って行ったのです。丁度その頃、「本物の木を外装に用いた家のメンテナンスが大変で、木もすぐに弱ってくる」という課題を、建材部門はクライアントと共有していました。ブレインチャイルドの説明を受けた美濃工業は、2人の技術に可能性を感じ、「木に見える樹脂の板」の実現を目指すプロジェクトをスタートさせました。
顧客の課題を解決した彩木第一弾
美濃工業の後押しを得たブレインチャイルドは、美濃工業が関連する工場の空いている場所に机を並べて、即席の作業場としました。樹脂の板の作り方は、木目のついた型の中に樹脂の液体を入れて膨らませ、形ができたら枠を外す――。3メートルの長さの樹脂の板300本を、約20人が手作業で製作しました。この樹脂の板がクライアントから高い評価を受けたことから、本格的な商品化への道が拓けることとなります。
本格的な生産化に向けた課題の洗い出し
商品化に向けてはいくつかの課題がありました。まずは生産体制の確立です。手作業では大量生産は難しく、品質の安定性にも難があります。そこで、機械化と工業化を進めるために、美濃工業が工場を探し出し、ブレインチャイルドに提供しました。新工場で作った製品はすべて美濃工業の建材部門に納められ、ハウスメーカーなどに販売されていきました。もう一つの問題は構造です。当時の「樹脂の板」はウレタン樹脂だけで作っていたので、太陽光を浴びると熱で樹脂が膨張し、板が反り返ってしまいました。そこで、伸縮を止めるために、芯を入れる方法が検討されます。
改良が加えられ進化を遂げる
紙の筒や鉄パイプ、FRPパイプ、ステンレスなど、さまざまな素材と形状のデータ収集が半年ほど行われ、最終的にアルミを押出し成形したものを芯材として使うことに決まりました。実現には、樹脂の中心にアルミの芯材を入れる方法や、アルミと樹脂の接着力を強化する工夫、2つの素材の熱量バランスの調整など、いくつもの課題をクリアしなければなりませんでしたが、それらの苦労を経て、現在の彩木と同じウレタン樹脂とアルミの芯材という構造が確立されました。
進化が新たな可能性を拓く
それまではサイディングや外壁の装飾材として活躍していましたが、芯材を入れたことで安定した強度を有するようになりました。新しい利用方法も模索され、まずはウッドデッキの製品化が進められるようになります。可能性を感じた美濃工業の建材部門とブレインチャイルド、ミノウッドの3つは、「彩木」の安定した生産を主な目的として長野県伊那市に新しい工場を整備して、新たに「MINO(当初の社名はミノネットワーク)」を設立します。彩木は従来品とは異なる新感覚の建材であったため、市場に認められるまでには時間がかかりました。しかし、さまざまなデータを提供、紹介しながら施工実績を積み上げていき、認知度を広げていき現在に至ります。
彩木の未来
彩木は優れた質感の他にも、強度、断熱性能など、いくつものメリットがあります。ウッドデッキだけではなく、窓枠、ドアなどへも領域を広げており、将来は家そのものを作りたいというのが、MINOの大きな目標であり想いです。また、彩木で培った自然物を再現する技術に対する需要も高まり、樹脂を用いた「ノコギリで切れる石」「四角い竹」など、さまざまな研究を実用化に向けて進行させています。クライアントからの要望を一つでも多く叶えられるよう、これからもMINOは独自のアイデアと表現力、実現力を磨いていきます――。